RASHIN(羅針) / 解説
比較推奨の証跡は、どう残せばよいか
比較や選別をして商品を勧めた時は、次の5点を、あとから検証できる水準で残します。
①顧客の主な意向 ②顧客の属性 ③比較・選別の対象にした範囲 ④提示・推奨の基準や理由 ⑤説明した内容の概要。様式は問われません。網羅的で詳細な記録や、顧客の署名・押印までは求められていません。
残す5点の中身
| ① 主な意向 | 顧客が何を求めていたか。提案の途中で意向が変わった場合はその変化と、最終的にその商品を選んだ理由。 |
|---|---|
| ② 顧客の属性 | 提案や選別の前提になった顧客の状況。 |
| ③ 比較・選別の対象範囲 | 候補に挙げた保険会社と商品。 |
| ④ 提示・推奨の基準や理由 | なぜその商品を提示し、勧めたのか。 |
| ⑤ 説明内容の概要 | 何を説明したか。「ほかの保険契約もあること」「求めがあれば説明すること」を伝えた事実を含みます。 |
出典: 別紙1 No.153・683(出典の②)
様式と保存期間
- 様式は自由です。紙でも、Excelでも、システムでも構いません。問われるのは「あとから検証できるか」です。
- 保存期間に一律の定めはありません(法令で定められているものを除く)。期間は代理店が社内規則で定め、その規則どおりに運用することが求められます。
- 一律・過度なシステム投資は求められていません。体制は、代理店の規模と業務の特性に応じたもので足りるとされています。
推奨理由の書き方 ― 通らない理由、通る理由
推奨の基準や理由には「合理的で、一定の具体性があること」が求められます。次の理由は認められないとされています。
- 手数料の水準、販売目標、保険会社からの便宜供与
- 保険会社との取引関係、代理店の社内都合
- 募集人の主観的・属人的な判断(別紙1 No.59)
実務で気をつけたいのは最後の1つです。「事故対応が良い会社だから」は、募集人の感覚のままでは主観的な判断にとどまります。同じ内容でも、商品の特性(補償範囲・特約・引受条件)や、自店で確認できる事実に結びつけて書けば、具体性のある理由になります。
| 具体性が足りない書き方 | 「当店のおすすめのため」「いつもこの会社なので」「対応が良いので」 |
|---|---|
| 具体性のある書き方 | 「顧客が重視した○○の補償が主契約に含まれるため」「顧客の事業内容(○○)に必要な特約を付けられるのが候補のうちこの商品だったため」 |
特定の保険会社に契約が偏っていること自体が、直ちに不適切とされるわけではありません。問われるのは、その理由を具体的に説明できるかどうかです。
記録は、あとで確かめるところまでが1セット
証跡は残して終わりではなく、代理店自身があとから確かめることが求められます。ただし全件の確認までは求められていません。
- 抜き出して確かめる(サンプリング)。募集人別・拠点別の傾向、特定の保険会社や商品への偏り、苦情や不祥事件の発生状況を踏まえて、確かめる案件を選びます(別紙1 No.675・678・679)。
- 課題が見つかったら直す。募集人への教育・指導、社内規則や記録方法の見直しまでを行い、その経過を残します。
比較ツールやシステムを使う場合
比較・選定の機能を持つシステムを使う場合は、選定のロジック、使うデータ、比較対象にする商品の範囲、推奨理由に代理店の都合が入り込まないよう留意し、その仕組みが適切かを確認・検証できる態勢を整えることが求められます(別紙1 No.20・33・36)。
また、保険料の比較表やシステムの出力結果を見せただけでは、意向把握や比較推奨を行ったことにはならないとされています。
羅針ではこう残る
RASHIN(羅針)では、新規の募集を進める流れの中に「意向の確認」と「比較・推奨」の段階があり、入力した内容がそのまま案件の記録として残ります。記録した日時も一緒に残ります。比較する保険会社の最低社数は代理店ごとに設定でき、推奨の方針は案件ごとにその時点の内容で保存されるため、あとで方針を変えても過去の案件の根拠は書き換わりません。
羅針は、どの商品を勧めるかを決めません。決めるのは募集人で、羅針はその判断の材料と記録を整える役割です。
料金を見る出典
- 金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令及び『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2026年8月28日)
- 同 別紙1「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」
- 同 別紙3「『保険会社向けの総合的な監督指針』の一部改正(新旧対照表)」
改正の全体像と、記録が要る場面・要らない場面は「ハ方式廃止で、保険代理店は何を記録すればよいか」にまとめています。
このページは、金融庁の公表資料を保険代理店の実務の視点で整理したものです。「具体性のある書き方」の例は当社が実務の言葉に置き換えたもので、金融庁が示した文例ではありません。個別の募集が適切かどうかの判断は、原文と所属保険会社の指示に従ってください。